お客様に対し、商品の値引きや返品をした場合には、インボイス(以下、「返還インボイス」という。)の作成と交付が必要です。言い換えれば、「返還インボイス」が必要になるのは、商品の返品や値引きをしたことにより、自社がすでに請求した請求金額の全部または一部を減額する場合です。
ここで注意していただきたい取引があります。それが、「振込手数料」です。
振込手数料(受取人負担)は、返品や値引きをしたつもりでもないのに、返品や値引きになってしまう厄介なパターンと言えます。
具体的には。。。
税込500,000円の請求に対して、お客様から振込手数料相当額880円を減額した499,120円の振込入金を受けたとします。
この振込手数料相当額880円が「値引き」に当たります。
「値引き」をしてもらっているというより、「集金代金の費用負担」なんだけど。。というのが実務的な実感です。しかし、インボイスの世界では、「値引き」です。
本来は、値引きになってしまった振込手数料相当額について、「返還インボイス」を作成しなければなりません。
請求金額よりも入金金額が880円少なくなって、そのうえ、「返還インボイス」まで作成して交付する必要があるなんて。。。あんまりだ。。って感じです。
そこで、先日ご説明した5.です。値引きや返品の金額が税込み1万円未満である場合です。
上記で説明した振込手数料相当額880円は当然1万円未満なので、この振込手数料相当額について、「返還インボイス」の作成と交付の必要なないということです。
振込手数料相当額以外でも、1万円未満の値引きや返品についても、「返還インボイス」の作成・交付の必要はありません。
☆ 振込手数料についての考え方 ☆
※今も昔も、下請法では、「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること」を禁止しています。つまり、『勝手に』振込手数料相当額を引いて振り込むのは違反です。『勝手』はだめです。
しかし、実務的には、「振り込んでもらえば、集金に行く手間(費用負担分)がなくなるんだから、振込手数料相当額ぐらい値引きしますよ。」という善意がいつの間にか取引の基本になってしまいました。
この考え方は、これからも同じです。取引先が納得してくれているなら、振込手数料相当額を引いた金額を振り込んでも問題はありません。『勝手に』振込手数料相当額を引いた金額を振り込むのは、昔も今後も違反です。
取引は、お互いの相互理解の上に成り立っています。
振込手数料も昔はもっとお値打ちでした。いつの間にか値上げされています。少しずつですが、環境が変わっています。
「下請け」なんだから、「振込手数料相当額を差し引かれて当たり前だ!」は、困ります。相互理解を大切にという話です。どちらが悪いという話ではないです。